カテゴリー「history」の25件の記事

2020年12月29日 (火)

2020年に観た映画とドラマ(備忘録)

備忘録としてメモしておきたい。

●映画
『ちむぐりさ』雪国生まれの少女の眼差しを通して本土と沖縄との関係見つめる。観て良かった。
『プリズンサークル』更生とは何か。罪と向き合うとはどういうことか。観ておくべき作品だった。
『はりぼて』議会制民主主義の形骸化を喜劇ふうに暴露して終わり、ではない。テレビドキュメンタリーの快作。
『なぜ君は総理大臣になれないのか』小川淳也議員に長期間密着。こんな国会議員もいる。対象との向き合い方が絶妙。
『ランブル』黒人音楽と考えられている作品のなかに先住民の楽曲や演奏が多いことを教えてくれる。目から鱗。
『パブリック』日本語にないパブリックの意味を公共図書館をめぐるドタバタ劇から学ぶ。市民社会を考える素晴らしい作品。
『行き止まりの世界に生まれて』貧困地域に生まれてしまった子供たちの現実を移民の子が撮影。格差社会の現実を描いた作品。
『ヒルビリー・エレジー』いわゆる貧乏白人の世界から弁護士になり成功した男性の回想録を映画化。日本人が知らないアメリカ。
『コリーニ事件』この事件(小説)によってドイツの法律が改正された衝撃の作品。
『人生フルーツ』晩年をこんなふうに生きられれば、という“しみじみ系”の作品。
『オフィシャル・シークレット』英諜報部の末端職員による内部告発の実話をもとにした作品。ジャーナリスト必見。
『ナイチンゲール』オーストラリアで先住民や女性たちがどのような過酷な人生を強いられたかを告発する勇気ある作品。
『スキャンダル』保守系フォックスTVを舞台にしたセクシュアルハラスメントを実名で描く。なぜ実名で作れるだろう。
『メイキング・オブ・モータウン』R&Bなどの黒人音楽レーベルがビジネスで成功したかが描かれる。
『マイルス・デイヴィス クールの誕生』天才・鬼才といわれる音楽家の人間像に迫る。作品はすごいが人間的にはいやな奴。
『i - 新聞記者ドキュメント』森達也監督が東京新聞の望月記者を追いかける。新聞記者の行動原理や使命感が素直に描かれる。
『三島由紀夫vs東大全共闘』TBSに残っていた映像を映画化。東大全共闘の人たちがすごく魅力的。ただし煙草吸いすぎ。
『シカゴ7裁判』ベトナム反戦運動に参加して起訴された7人市民や学生の法廷劇。正義と政治を考える良作。
『マルモイ ことばあつめ』日帝の支配下にあった朝鮮半島で、辞書を作り言葉を守ろうと奮闘するドラマ。
『愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」一水会の元代表の実像に迫るドキュメンタリー。真面目で誠実な人柄にますます惹かれる。
『テネット(TENET)』順行する時間世界と逆行する時間世界をめぐる理解困難な問題作。
『はちどり』平凡な家庭の少女が体験した90年代の韓国ソウルの受験戦争、家父長制、経済成長……などが低い目線で描かれる。
『82年生まれ、キム・ジヨン』おそらく東アジア全域に共通する女性差別をえぐる作品。ベストセラー小説の映画化。
『罪の声』グリコ森永事件をモチーフにした小説の映画化。「城南宮バス停のベンチの裏」が耳に残る。
『男はつらいよ~お帰り 寅さん』満夫が小説家になっていたり、リリーさんが神保町でジャズバーを経営していたり。
『レディ・ジョーカー』2時間ほどの映画で描ききれない作品。渡哲也に物井清三は似合わない。
●2020年に観たドラマ
『プレス 事件と欲望の現場』(PRESS)『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』に通底する話がいくつもありびっくりした。BBC。
『ニュースルーム』(The NEWSROOM)共和党支持を表明するアンカーを中心にしたHBOアメドラ。アーロン・ソーキン作。
『スタートレック:ピカード』(Star Trek: Picard)

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2019年2月14日 (木)

戦没新聞人の碑とカメジロー

Photo_2これまで仕事のため沖縄を数回訪れていますが、今春ようやく「戦没新聞人の碑」の前に立ちました。この碑はわたしが生まれた1961年9月の末に建立されています。除幕式のようすについて、毎日新聞はベタ記事で次のように伝えています。

【那覇三十日三原特派員】沖縄で戦死した新聞人十四人の功をたたえる「戦没新聞人の碑」の除幕式が新聞週間を前に(1961年9月)三十日午後、遺族をはじめ瀬長琉球政府副主席、新聞、放送関係者ら約百人が列席那覇市波上、旭加丘で行われた。戦没者のうち十二氏は、当時の沖縄新聞社の関係者で、そのほとんどは輪転機を最後まで守り砲爆撃に倒れた。他の二氏は宗貞利登朝日新聞那覇市局長、下瀬豊毎日新聞那覇支局記者で、激烈を極めた戦場で報道の任務に散ったものである。

この碑の前で慰霊祭が毎年営まれているようですが、胸中は複雑です。というのも当時の新聞人は戦時宣伝の担い手だったからです。「自由な報道が許されず不本意であった」という人が皆無だったとは思いませんが、むのたけじさんの回想などを読んでいると、当時の新聞倫理がどのようなものであったかは容易に想像できます。沖縄でどのような新聞が発行されていたかについては、琉球新報社の『沖縄戦新聞』でも一端が紹介されています。

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2015年8月19日 (水)

戦後70年に読む手塚作品

 8・6(ヒロシマ)、8・9(ナガサキ)、安倍談話、閣僚の靖国参拝、そして終戦の日。8月16日以降は、戦後70年企画の特別番組もなくなりました。こんなのでいいのかな。それはさておき、疎遠になっていた手塚治虫の作品をこの夏にいくつか読みました。印象深かったのは『奇子』と『アドルフに告ぐ』です。Wikipediaによると『奇子』は1972~1973年に『ビッグコミック』に連載され、NDL-OPACでみると1976に大都社から単行本が出ていました。『アドルフに次ぐ』は1983~1985年に『週刊文春』に連載されています。ともに戦争の狂気が史実をまじえて描かれ、戦後70年の節目の年に読むには良い内容だと思いました。

手塚治虫『奇子 1』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『奇子 2』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『奇子 3』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『アドルフに告ぐ 1』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『アドルフに告ぐ 2』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『アドルフに告ぐ 3』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『アドルフに告ぐ 4』 Kindle版、手塚プロダクション、2014
手塚治虫『アドルフに告ぐ 5』 Kindle版、手塚プロダクション、2014

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2011年2月21日 (月)

「市民社会」がかつて含意したもの(備忘録)

わたしたちが少しのためらいもなく使う「市民社会」という言葉は、かつての日本では軽々に使われることはなかった。理由はマルクス主義の影響である。戦後の思想界をリードした丸山眞男や大塚久雄が活躍した時代、「市民社会」という言葉は civil societyではなく、 bürgerliche Gesellschaft (ブルジョアのゲゼルシャフト)の翻訳として受け止められるのが一般的で、この言葉を肯定的に使用することは資本主義を容認し、教条的なマルクス主義者からの批判を招くものであった。こうした日本の「市民社会」をめぐる議論について整理してくれている論文と出会った。

渡辺雅男(2009)「日本における市民社会論の系譜」『一橋社会科学』通号6,pp.49-72.

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2011年2月 6日 (日)

トクヴィルと新聞の分権(備忘録)

Hasegawa_journalism01ほんの少し前まで「ブログ」と「革命」をセットで使っていた人もいたが、 facebook や twitter がチュニジアやエジプトで国家権力を揺るがし、Wikileaks が核兵器を保有する超大国を慌てさせる時代に入ってしまった。ある時点のテクノロジーが未来を規定すると考えた矢先に、次なる別のテクノロジーとその受容が過去の予測をどんどん上書きしてしまう。そんな時代に、少し古いけれどとても面白い論文に出遭った。

長谷川秀樹(1998)「トクヴィルのデモクラシー論における新聞の位置:ジャーナリズムの自由と分権 (トクヴィルと現代)」『立命館大学人文科学研究所紀要』 (72), 53-71.
Full Text "DEMOCRACY IN AMERICA" Alexis DeTocqueville
Democracy in America — Volume 1 by Alexis de Tocqueville - Project Gutenberg
Democracy in America — Volume 2 by Alexis de Tocqueville - Project Gutenberg
アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)
アメリカのデモクラシー〈第1巻(下)〉 (岩波文庫)
フランス二月革命の日々―トクヴィル回想録 (岩波文庫)

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2011年1月31日 (月)

根津神社と権現信仰

Nezu一次審査のレジュメづくりも一段落した(ことにする)ので、きのうの昼下がりに同居人のお供をして散歩に出かけた。行き先は根津。これまでにも何度か歩いた街だけど、根津神社に足を踏み入れたのは今回が初めてだった。境内に入ると、ひしゃくで手と口を清める手水舎(ちょうづや)があるのだが、そこには寺院を示す「卍(まんじ)」の印が彫られていた。この神社はかつて「根津権現」として知られていたのだ。

内山節(2010)『共同体の基礎理論:自然と人間の基層から (シリーズ 地域の再生)』農山漁村文化協会

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2010年2月24日 (水)

『蟻の兵隊』はスクープ映画

Arinoheitai約2600人の日本軍兵士が、終戦後も中国・山西省に残り、中国共産党軍と戦ったという、不可解な史実は、いまもそれほど多くの人に知られていないのではないか。歴史の闇に埋もれていたとこの事件を、ドキュメンタリー作家・池谷薫は、元兵士たちに寄り添い、彼らの証言を掘り起こし、世に問うた。2006年に公開され反響を呼んだこの作品を観たのは2010年になってから。なにを今さらかもしれないが、観てよかったと思う。

池谷薫監督 『蟻の兵隊』 (蓮ユニバース、2006)
映画『蟻の兵隊』公式サイト http://www.arinoheitai.com

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2009年1月16日 (金)

郷土のコモンズ戦国武将

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NHK大河ドラマを誘致するため、官民挙げた息の長い運動が各地で繰り広げられている。舞台が巨大都市ならいざ知らず、過疎地にドラマがやってきたら、それもう一大事である。たとえ脇役でも、人気芸能人が地元にやってくるだけで、その効果は絶大。たとえば2007年の『風林火山』の主人公は武田信玄の軍師で主な舞台は山梨だったと思うのだが、信玄の宿敵・謙信を演じたGacktさんがロケなどで幾度も訪れた新潟県上越市は沸きに沸いた。地元紙によると、8月の謙信公祭は2日間で過去最多の20万3100人の観客を記録! その数は上越市の全人口をあっさり超えていた。

外川淳『直江兼続 戦国史上最強のナンバー2』 アスキー新書、2008
ガクト旋風、タイムスにも 早々と新聞売り切れ(上越タイムス - 2007年9月10日)
ガクト謙信、大きな経済効果 「一過性で終わらないよう」(上越タイムス - 2007年9月28日)
Gackt動画 http://cgi2.nhk.or.jp/paphooo/result/search_result.cgi?action=detail&file_no=1999

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2009年1月 5日 (月)

『國民の創生』からオバマ政権へ

144351Birthofanationpostercolorあの映画から90年あまりで、黒い肌の男性が大統領に就任するとは、映画の父グリフィスも想像できなかっただろう。あの映画とは、南北戦争からリンカーン暗殺、K.K.K.の創設までを描いた『國民の創生』(1915)である。K.K.K.を英雄として礼賛したことから、「アメリカの恥」とも言われた作品であるが、だからこそ2009年1月にあえて振り返ってみる価値がある。アメリカというネーションがいかにして想像 (or 捏造) され、今日に至るのか。

G.W.グリフィス監督 『國民の創生』 ( 原題: The Birth Of A Nation、1915、米 )

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2008年11月25日 (火)

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 の源流

Therewillbebloodこの作品をめぐっていろんな深読みがなされており、その一方で、やはり映画そのものについて語るべしという真っ当な意見もある。映画の原作となったシンクレア『石油!』を読んでいないくせに深読みをするのは滑稽だが、あえて妄想してみたい。わたしの感想は、この作品の底流に大恐慌時代のアメリカで盛り上がった社会主義的な思想が脈打っているのではないかということ(そして、主人公を演じたダニエル・デイ=ルイスが植木等に似ていたということ)。ことし観たなかで最高の映画だと思う。

ポール・トーマス・アンダーソン監督 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 (原題: There Will Be Blood, 2007、米)

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