カテゴリー「law」の37件の記事

2020年12月29日 (火)

2020年に観た映画とドラマ(備忘録)

備忘録としてメモしておきたい。

●映画
『ちむぐりさ』雪国生まれの少女の眼差しを通して本土と沖縄との関係見つめる。観て良かった。
『プリズンサークル』更生とは何か。罪と向き合うとはどういうことか。観ておくべき作品だった。
『はりぼて』議会制民主主義の形骸化を喜劇ふうに暴露して終わり、ではない。テレビドキュメンタリーの快作。
『なぜ君は総理大臣になれないのか』小川淳也議員に長期間密着。こんな国会議員もいる。対象との向き合い方が絶妙。
『ランブル』黒人音楽と考えられている作品のなかに先住民の楽曲や演奏が多いことを教えてくれる。目から鱗。
『パブリック』日本語にないパブリックの意味を公共図書館をめぐるドタバタ劇から学ぶ。市民社会を考える素晴らしい作品。
『行き止まりの世界に生まれて』貧困地域に生まれてしまった子供たちの現実を移民の子が撮影。格差社会の現実を描いた作品。
『ヒルビリー・エレジー』いわゆる貧乏白人の世界から弁護士になり成功した男性の回想録を映画化。日本人が知らないアメリカ。
『コリーニ事件』この事件(小説)によってドイツの法律が改正された衝撃の作品。
『人生フルーツ』晩年をこんなふうに生きられれば、という“しみじみ系”の作品。
『オフィシャル・シークレット』英諜報部の末端職員による内部告発の実話をもとにした作品。ジャーナリスト必見。
『ナイチンゲール』オーストラリアで先住民や女性たちがどのような過酷な人生を強いられたかを告発する勇気ある作品。
『スキャンダル』保守系フォックスTVを舞台にしたセクシュアルハラスメントを実名で描く。なぜ実名で作れるだろう。
『メイキング・オブ・モータウン』R&Bなどの黒人音楽レーベルがビジネスで成功したかが描かれる。
『マイルス・デイヴィス クールの誕生』天才・鬼才といわれる音楽家の人間像に迫る。作品はすごいが人間的にはいやな奴。
『i - 新聞記者ドキュメント』森達也監督が東京新聞の望月記者を追いかける。新聞記者の行動原理や使命感が素直に描かれる。
『三島由紀夫vs東大全共闘』TBSに残っていた映像を映画化。東大全共闘の人たちがすごく魅力的。ただし煙草吸いすぎ。
『シカゴ7裁判』ベトナム反戦運動に参加して起訴された7人市民や学生の法廷劇。正義と政治を考える良作。
『マルモイ ことばあつめ』日帝の支配下にあった朝鮮半島で、辞書を作り言葉を守ろうと奮闘するドラマ。
『愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」一水会の元代表の実像に迫るドキュメンタリー。真面目で誠実な人柄にますます惹かれる。
『テネット(TENET)』順行する時間世界と逆行する時間世界をめぐる理解困難な問題作。
『はちどり』平凡な家庭の少女が体験した90年代の韓国ソウルの受験戦争、家父長制、経済成長……などが低い目線で描かれる。
『82年生まれ、キム・ジヨン』おそらく東アジア全域に共通する女性差別をえぐる作品。ベストセラー小説の映画化。
『罪の声』グリコ森永事件をモチーフにした小説の映画化。「城南宮バス停のベンチの裏」が耳に残る。
『男はつらいよ~お帰り 寅さん』満夫が小説家になっていたり、リリーさんが神保町でジャズバーを経営していたり。
『レディ・ジョーカー』2時間ほどの映画で描ききれない作品。渡哲也に物井清三は似合わない。
●2020年に観たドラマ
『プレス 事件と欲望の現場』(PRESS)『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』に通底する話がいくつもありびっくりした。BBC。
『ニュースルーム』(The NEWSROOM)共和党支持を表明するアンカーを中心にしたHBOアメドラ。アーロン・ソーキン作。
『スタートレック:ピカード』(Star Trek: Picard)

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2012年5月 1日 (火)

最近みたドキュメンタリー映画

意識的にガマンしてきた映画鑑賞をゆるゆると再開しはじめた。最近みたのは、井手洋子監督『ショージとタカオ』(2010)と鈴木正義監督『医す者として』(2011)である。2作品は異なる視点から、異なる手法で作られており、並べて感想を述べる蓋然性はないが、たまたま続けて観る機会があったので、考えたことをつづってみたい。

井手洋子監督『ショージとタカオ』(2010)
  井手洋子『ショージとタカオ』(文藝春秋,2012)
鈴木正義監督『医す者として』(2011)
  南木佳士『信州に上医あり―若月俊一と佐久病院』(岩波新書、1994)
  若月俊一『村で病気とたたかう』 (岩波新書、2002)

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2010年2月12日 (金)

引用と剽窃と立松さん(他山の石)

Tatematsu_5故立松和平さんの死亡記事や追悼記事をみていると、いまだに「引用」と「剽窃」の区別ができていない記述にお目にかかり当惑した。記事のなかで、「無断引用」という表現がプロ表現者によって使われているのは嘆かわしい。「引用」は本来無断で行う行為であり、「剽窃」とは別なる概念である。この2つの言葉がいまだに混同されるのは何故だろう。

すこし横道にそれるが、立松さんが盗作後に書き直した作品を高橋伴明さんが撮った『光の雨』は、劇中劇のスタイルを採っていて、ストレートな若松作品と見比べると面白い。

高橋伴明監督 『光の雨 連合赤軍事件』 (2001)

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2009年9月11日 (金)

イーストウッドと法治主義

ChangelingGrantrinoイーストウッドの近作2本が評判だったので「とりあえず」という気分で観てみたところ、なんだかすっかり引き込まれた。イーストウッド作品はこれまで何本か観ているが、ひとつのパターンがあるように思われる。パターンというと語弊があるかもしれないので、「世界観」「思想」といい直しておこう。それは、彼の作品は、どれもアメリカ映画の一大ジャンルともいえる「法廷映画」とは対極にあるということである。

クリント・イーストウッド監督 『グラン・トリノ』 (原題: Gran Torino, 2008, 米)
クリント・イーストウッド監督 『チェンリジング』 (原題: Changeling, 2008, 米)

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2009年3月31日 (火)

『アラバマ物語』は法より隣人愛

To_kill_a_mockingbird_2『十二人の怒れる男』と対照的な法廷映画『アラバマ物語』をようやく観た。宿直勤務明けで脳は不活発だったが、ぐいぐい引き込まれた。素人ながら、わたしが観た法廷映画の最高傑作の部類に入ると思う。『十二人』と同じく、『アラバマ』も被告人が被差別の少数者。予断と偏見に基づいた冤罪であり、有罪にしてはならない。『十二人』の陪審員は被告を無罪とし、わたしたちをスッキリさせてくれるが、『アラバマ』の陪審員がわずか2時間で下した判決は有罪。共同体主義の負の側面「多数者の専制」に対し、ヤモメ弁護士が立ち向かう姿にグっとくる。

アラン・パクラ製作, ロバート・マリガン監督 『アラバマ物語』 (原題: To Kill a Mockingbird ,1962, 米)

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2008年9月 9日 (火)

ミハルコフ『12人の怒れる男』は法より慈悲

12wa6ヘンリー・フォンダが『十二人の怒れる男』(原題:”12 Angry Men”)を世に送り出してから半世紀。ロシアのニキータ・ミハルコフがロシア版の『12人の怒れる男』(原題:”12”)を製作した。舞台は21世紀のロシア。戦火を逃れてきたチェチェン少年がロシア人の養父を殺害したとして起訴される。今日的な素材を扱いながらも12人の陪審員が討議の後、合意に至る点はオリジナルと同じだが、底流に流れるのは〈ロシア的なるものの再興〉のように思えた。

ニキータ・ミハルコフ監督 『12人の怒れる男』 (原題:”12”、2007、ロシア)

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2008年9月 6日 (土)

自由の制約<犯罪の防止?

Shimabara_police
元公安委員長の白川勝彦さんが職務質問に遭った顛末をウェブサイトで紹介している。ひとつは2004年11月のできごとを記した忍び寄る警察国家の影、もうひとつは2006年12月22日に掲載された「またまた職務質問に!」である。いずれのケースも東京・渋谷警察署の地域課職員による圧迫的な内容。2度目のケースで白川氏が職質の理由をただしたところ、警官の1人は「これでけっこう犯罪が見つかるんですよ」と自信たっぷりに答えたという。このところ、わたしのブログが「職質」で検索されることも多い。とりわけ秋葉原事件以降、アキバをはじめ新宿、渋谷など各地で強引で悪質な職質が横行しているようだ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言わんばかりの手当たり次第の職質は、市民的自由の侵害にほかならない。真面目な警察官もいると信じたいが、法知識のない若者やヲタク男性をいじめてストレスを発散させている不届き者もいることは、YouTubeにアップロードされた動画などから想像できる。

リベラリスト 白川勝彦の 「永田町徒然草 またまた職務質問に!」
渋谷ドキュメンタリー24時(19) ~ 逮捕から職質まで ~ on YouTube
職務質問@秋葉原中央通り 02 on YouTube
職務質問競技会(2007/09/04放送) on YouTube 

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2008年8月26日 (火)

『カルラのリスト』における正義

La_liste_de_carlaこの種のドキュメンタリー作品を、『崖の上のポニョ』や『ダークナイト』などと同列に並べて、100点満点で40点とか50点とか断じるのは筋違いである。この作品は、旧ユーゴ紛争で大量虐殺をして逃げ延びている大物戦犯を追いかける検察官(Carla Del Ponte)の過酷で苛立たしい日常を軸にした政治映画だからだ。娯楽作品のように、ストーリーや映像美、カメラワークや音響・照明技術などをもとに数値化するのは、むろん自由だが、どうせなら公共的な討議空間にじぶんの意見をほうりこんみてはどうだろう(ほな、アンタがやれよ、と言われるやろな)。

マルセル・シュプバッハ監督 『カルラのリスト』 (原題:"La Liste De Carla"、英題:"Carla's List"、2006、スイス)

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2008年6月20日 (金)

ふりだしのロールズ (備忘録)

Contemporarypoliticalphilosophy A_theory_of_justice秋葉原の通り魔事件が、格差に関する議論に弾みをつけている。容疑者が携帯サイトの日記に「勝ち組はみんな死んでしまえ」などの文章を残していたことがマスメディアで広く伝えられたためだ。ただし、日記を見てみると、経済格差やその原因のひとつである学歴差別の問題よりも、むしろ容姿や恋愛をめぐる“負け組”意識(内的な格差感覚?)のほうが深刻に思える。そして、そうした格差感覚に対し、ロールズの正義原理はうまく適用できない。ただし、せっかくなのでこの際、ロールズが最初に提示した原理を備忘録としてメモしておきたい。ロールズはすごろくでいうと「ふりだしに戻る」的な存在だ。

ロールズ,J (1979) 『正義論』 矢島鈞次(訳)、原題 ”A Theory of Justice”、紀伊国屋書店
キムリッカ, W (2005) 「第3章 リベラルな平等」 、『新版 現代政治理論』 岡崎晴輝ほか(訳)、原題 ” Contemporary Political Philosophy”、日本経済評論社

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2008年5月 7日 (水)

『情婦』は秀逸な法廷サスペンス

Witnessfortheprosecution洋画の原題と邦題のギャップに戸惑うことは珍しいことではない。邦題に騙されて観てみたらガックリさせられたり、邦題のために遠ざけていた作品を観たあとで「なんでもっと早くみておかなかったのか」と臍をかむこともある。今回は後者のほうだった。

ビリー・ワイルダー監督 『情婦』 (原題: Witness for the Prosecution、米、1958)

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