カテゴリー「science」の6件の記事

2010年4月 7日 (水)

いまこそ安部公房

Inter_ice_age私がすきな日本の作家に安部公房がいる。安部の作品には、人類の業のようなものを感じさせられてきた。三島ではなく、大江でもなく、安部公房の作風と独特な表現に惹かれてきた。1980年代半ばにシベリア鉄道でソ連を横断したとき、「おれはКобо Абеが好きだ」というロシア人がいた。海外に翻訳された点数も多い。だが、ここ数年、街角の本屋さんで安部を見かけなくなった。忘れられた大作家になったことを残念に思っていたところ、KINOKUNIYA書評空間BOOKLOGで石村清則さんが『第四間氷期』を紹介されていたのを知り、嬉しくなるとともに、安部の卓越した人間観・未来観にあらためて感心した。

安部公房『第四間氷期』(新潮文庫、1970年、初出は1958~59年『世界』)

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2008年10月15日 (水)

『宇宙消失』にみる量子論のふしぎ

Quarantine『日本以外全部沈没』を書いた筒井先生でも、『宇宙以外全部消失』というのは無理だろう。ただ、イーガンの『宇宙消失』は宇宙が消えるわけではない。原題“Quarantine”が示すとおり、人類が隔離され、宇宙が消えたかのように見える近未来世界を舞台にした小説で、量子論の知識がないとつらいハードSF。この種のSFを読みたくなるのは、量子論になぜか惹かれるものがありながら、勉強するだけの能力がないことへの代償行為だと思う。

グレッグ・イーガン (1999) 『宇宙消失』 原題: Quarantine 創元SF文庫

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2007年10月23日 (火)

CGさまさま

コンピューターグラフィックス(CG)がないとイメージできないものがいくつもある。わたしの場合、複雑系やカオスについて言葉としては聞いたことがあったと思うが、「なんだかすごいことらしい」という程度の認識しか持っていなかったが、たまたまテレビ番組で「マンデルブロ集合」なるものをCGで見た途端、ノックアウトされた。このときのショックほどではないにせよ、某局が某夜に特集したポアンカレ予想に関する番組は面白かった。

ポアンカレ予想 (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

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2007年4月22日 (日)

計画制御の愚

Yasutomi01複雑系について興味がないわけではないが、夏学期に履修登録したY先生の本を読んでいて「ああ、なるほど」とひざを打った。たとえば何かプロジェクトを推進するとき、わたしたちは (1)調査→ (2)計画→ (3)実行→ (4)評価 というような順序でものごとを進めようとする。こうした枠組みは「計画制御」と呼ばれ、機械の制御などでよく用いられる。しかしY先生によると、複雑な変数が入り組む社会において計画制御は「いつもうまくいかないはずだ、もしうまくいくことがあるとしたら、それは別の理由があるはずだ」と力説する。

安冨歩(2006)『複雑さを生きる-やわらかな制御』岩波書店

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2004年10月25日 (月)

ライターとジャーナリストの距離

サイエンスライターの育成を支援しようという国の計画が、ちょっとした話題になった。文科省の科学技術・学術審議会の部会が骨子案にまとめたという記事が2004年10月20日に報じられ、その後、さまざまな反応がウェブログや掲示板、ウェブ日記などで見られた(参考)。対象が「サイエンスライター」と限定されるが、足元の業界を考えるうえで興味深い話題である。

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2004年9月29日 (水)

小説『タイムライン』で量子論が分かった気に

9月下旬、はじめて草津温泉でのんびりさせてもらった。足湯しながらボーっと読んでいた本は、社会学のお勉強系ではありません。なーんのタメにもならない娯楽系のSFでした。ひとつはスタートレックもの。もうひとつはクライトンもの。2つとも時間と空間を飛び越えるハナシで、はっきり言って現実逃避です。

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