カテゴリー「publishing」の28件の記事

2020年3月23日 (月)

『沖縄で新聞記者になる』トークライブ@那覇

3月19日、『沖縄で新聞記者になる:本土出身者が語る沖縄とジャーナリズム』の新刊トークイベントを那覇で開いてもらいました。担当編集者・新城和博さんの司会で、琉球新報記者の玉城江梨子さんと沖縄タイムス記者の阿部岳さんをゲストに、本土と沖縄とメディアについて、熱く楽しく語り合いました。

会場は那覇のライブスペースPunga Ponga(プンガポンガ)で、このイベント自体も経営者・翁長巳酉さんからいただいた提案を、わたしが版元のボーダーインクに相談して開催の運びとなりました。わたしは詳しく存じ上げなかったのですが、翁長巳酉さんはパーカッショニストで、ブラジル在住時には邦字紙記者もしていたというパワフルで素敵なウチナーンチュです。

イベントの主宰は版元のボーダーインク。この会社は沖縄で唯一、新書を作っている出版社で、わたしとは縁もゆかりもありませんでした。わたしは『沖縄で新聞記者になる』 の元になった小さな論文を学部紀要に書いていて、それを携えてボーダーインクの池宮紀子社長に直談判して「ぼくの本を出して」と頼みこみました。怪しい売り込みだったと思いますが、論文に目を通してくれて「新書にしましょう」と応じてくれました。(ボーダーインクに持ち込んでよかったなあと思っています)

イベント司会をしてくれた担当編集者の新城和博さんは、ご自身が沖縄のサブカルチャーシーンを切り拓いた名物編集者で、最近は毎日新聞からメディア時評の執筆を依頼されるなど著名な書き手です。わたしの原稿で伝わりづらい部分を指摘してくれたり、「ここが足りないよ」などと助言してくれ、大いに助かりました。わたしはトークなんて初めてで、戸惑うことも多かったのですが、新城さんの手綱さばきに導かれて、大恥をかかずに済んだように思います。

連日、新型コロナウイルスのニュースでもちきりの時期的に・・・・・・という危惧もあったと思いますが、感染予防の万全の態勢で臨み、雨の夜にもかかわらず満員御礼になりました。多くの人が足を運んでくれたのは、翁長さんや新城さんへの信頼に加え、琉球新報記者の玉城江梨子さんと沖縄タイムス記者の阿部岳さんがゲストとして来てくれたおかげです。記者志望で就活中の学生や現役ジャーナリスト、大学の研究者、さまざまな背景をもつ方にお越しいただきました。

玉城さんは本土出身ではありませんが、この本を作る際に、最初に相談に乗り協力してくれた恩人です。阿部さんは安倍晋三首相の会見で「総理、これが記者会見と呼べるんですか」と声を上げたことでも注目を集めた方ですが、本土出身の立ち位置について自著ルポ沖縄 国家の暴力でも内省されていて、『沖縄で新聞記者になる』でもたびたび登場する重要人物です。

この企画を発案してくれたPunga Pongaの翁長巳酉さんにも感謝申し上げます。新城さん、玉城さん、阿部さん、ありがとうございます。

追記:ちなみに『沖縄で新聞記者になる』の中心的な問いは、勁草書房刊『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』に収録した「CASE:019 宗主国の記者は植民地で取材できるか」に接続します。あわせてお読みいただければ幸いです。

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2020年2月21日 (金)

3・19 那覇で新刊トークイベント

319_punga_ponga_night 『沖縄で新聞記者になる』の新刊トークイベントで開催することになりました。那覇のブラジル料理&イベントスペース Punga Ponga さんから提案をいただき、大阪人らしく「ワイもいっちょうやったろかぃ!」みたいな気分で挑戦することにしました。琉球新報の玉城江梨子さん、沖縄タイムスの阿部岳さんにご登壇いただき、進行は版元ボーダーインクの新城和博さんにお願いします。

ただ正直なところ、じぶんが見られる側に回るのは得意ではありません。話の流れを読みながら、当意即妙に気の利いた台詞を繰り出したり、会場を沸かせるようなジョークを挟むような経験値は低いです。

もちろん、大学教員になってからは、講義で90分しゃべり続けることもありますし、シンポジウムのパネリストでコメントをすることもあります。でも、それはネタを仕込んでいるからできること。どこから弾がとんでくるわからない言葉のやりとりは、正直こわい。やはり新聞記者出身なので、聞き役のほうが身についています。

せっかく新刊トークをするのですから、ぜひ大勢の方にきていただき、たくさんの質問・異論・反論をぶつけていただきたいと思います。

なお、イベント会場では書籍も販売します。著者のトーク内容とそこからにじみ出る人間性をじゅうぶん吟味したうえで、購入の可否をご判断ください。どうかよろしくお願いします。

Punga Ponga - facebook page

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2019年11月29日 (金)

『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』重版出来!

Dsc_1122『ジャーナリズムの道徳的ジレンマ』(勁草書房)が2019年11月20日、めでたく「重版出来」となりました。重版とは増し刷り(第2刷以降)のことで、出版業界では「出来(しゅったい)」という言葉を使って表現しています。本書を作るにあたってお世話になった記者や研究者のみなさまに感謝申し上げます。元をたどればこの本は勁草書房編集部ウェブサイト・けいそうビブリオフィルの連載を書籍化したもので、連載時の遅筆・悪筆を辛抱強く支えてくれた編集者にもこの場を借りて御礼申し上げます。

この本は研究書ではありませんし、わたしの主張も述べられていません。献本先の研究者には「なんじゃこれ」「イロモノか」という印象を与えたと思います。あえて、こういう本を作ったのにはいくつか理由があります。ひとつは、論文調の文体で主張を繰り広げても、新聞社やテレビ局の記者やディレクターは読まないだろうと思ったからです。メディアの実務家は学者の権威は利用しますが、正直なところ「現場を知らない外野席のセンセイ」のような印象を抱いています。なので、そういう実務家に少しでも興味を持ってもらえる本にしたかった。もうひとつは、わたし自身が授業で使いたい教科書が見当たらなかったので、いっそのこと自分で作ろうと思いました。

記者をやめてしばらくたってから、ジャーナリズムの現場を悩ます報道倫理のグレーゾーンについて、自分の反省もこめて実務家たちと語りあいたいと思うようになりました。記者時代に青臭い話をすると「そんなヒマがあったら仕事しろ」という圧力を感じたものですが、じぶん自身、仕事を通じた議論が足りなかったように思っています。他方で、メディア不信の広がりには胸を痛めてきました。いわゆる「マスゴミ論」を唱える人はメディア企業の傲慢な点にしか目がいかず、怒りや憎しみばかりが高じて、取材現場の苦悩や涙が見えなくなります。できれば「マスゴミ論」信仰にとらわれた人たちとの対話の回路を閉じたくないと考えてきました。

ところで、若い取材者たちはG・オーウェルがいう〈二重思考〉に絡め取られがちだと思うのです。「業界的には正解」という思考が、じつは社会一般では「非常識」と断じられる例が多いからです。ジャーナリストになりたての若者は、市民道徳と業界の基準との間でもがくのが通例ですが、やがて茹でガエルのように業界人になっていくにつれ、市民道徳との距離を広げてしまうのではないでしょうか(私もかつてその端くれでした)。

そもそも、加害者や被害者の実名/匿名の問題は「京アニ事件」によって初めて浮上した問題ではなく、何十年も前から報道現場に突きつけられてきた課題でした。取材謝礼の問題や、原稿の事前チェック、ハラスメント被害などの類いも、振り返ればこれまで数え切れないくらいありました。しかし、それらはどのように受け継がれ、教訓とされてきたかというと、かなり心許なく感じられます。「のど元過ぎれば熱さを忘れる」という諺がありますが、過去の事例であれば安心して熟慮・熟議の対象にできるはず。私はこの本でそんな事例を20ほど(正確には19)を集めました。

わたしはこの本を本務校の「メディアと倫理」という授業の教科書に指定し、ワークショップ形式の授業をおこなっていて、2019年度は他大学や他学部からの受講生も含めて250人が履修してくれました(昨年度は17人でしたが)。授業ではアンケート形式で学生にスマホで自分の見解を入力してもらい、リアルタイムでスクリーンにグラフを表示させたり、マイクを回して意見交換したりしています。一方通行の講義ではないので、不規則発言もあれば、思わぬ方向に議論がそれることもあり、わたし自身の勉強にもなっています。

トロッコ問題にみられるように、道徳的ジレンマの思考実験は通常、絶対的に正しい唯一の「正解」がありません。わたしが授業で重視しているのは、他者が示した「正解」を論破して沈黙させることではなく、複数ある「正解」のうち自分はどういう筋道でその「正解」にたどり着いたかを、社会理論やジャーナリズム研究の仮説を動員して理性的に論じること。そして、他者の見解に真摯に耳を傾けることです。

現役ジャーナリストのみなさん、ワークショップ形式の勉強会を開催するなら、気軽にお声がけください。もちろん興味のある方は授業にもぐりに来て、学生たちの、つまり普通の市民の倫理観や道徳感情に触れてみてください。じぶんがどれくらい業界内の論理に染められているかが実感できると思います。

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2018年4月 9日 (月)

ジャーナリズムに地域主義を

きょうから2018年度の授業が始まります。

龍谷大学社会学部の教員になったのが2013年春なので、この4月から6年目に突入です。共同通信社を辞め、博士論文の執筆に2年を費やした日々が、徐々に遠ざかっていることを実感します。2年間の間に東日本大震災があり、学術書と論文に埋もれている自分を、運が悪いと呪ったものです。でも、きょうまでやってこられたのは、編集者の同居人と東大の恩師に支えてもらったおかげでだと感謝しています。

また、今日までの間に、各方面の先生方から執筆のお誘いをいただき、いくつかの共著者の仲間入りをさせていただきました。まもなく、論創社から『危機の時代と「知」の挑戦』(照屋寛之・萩野寛雄・中野晃一編著)が刊行されます。上巻の第4章で「 国家に馴致されないメディアの必要――ジャーナリズムに地域主義を」と題した小論を発表させていただきました。執筆にあたり、東北福祉大学の長谷川雄一先生にはたいへんお世話になりました。あらためて感謝申し上げます。

照屋寛之・萩野寛雄・中野晃一編著『危機の時代と「知」の挑戦』(論創社)

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2014年12月22日 (月)

『地域ジャーナリズム』 よろしくお願いします

Communitarian_journalism
『地域ジャーナリズム:コミュニティとメディアを結びなおす』(勁草書房)が2014年12月22日に配本されました。調査でお世話になりました上越の皆様や論文審査でお世話になった先生方にあらためて御礼申し上げます。クリスマスにはには大都市圏の大型書店の人文社会コーナーに入るかもしれません。東京・日比谷の日本プレスセンター1階にあるジュンク堂なら品切れになることはないと信じます。ジャンルとしては研究書ですが、極私的ノンフィクションの要素も取り入れました。地域コミュニティにしっかり根を下ろしているメディア関係者には言うまでもなく、主流メディアのジャーナリストや経営者にも参考になることを願っています。

畑仲哲雄(2014)『地域ジャーナリズム:コミュニティとメディアを結びなおす』勁草書房.

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2010年3月23日 (火)

著者直筆のポップを探せ

03250941同居人が転職後はじめて関わった単行本が書店に並んでいます。東北大学大学院の小田中直樹著『ライブ・合理的選択論』(勁草書房、2010)。書店によっては、書棚には著者・小田中さん直筆のポップをおいているところがあるようです。お近くの書店で見かけたら、報告をよろしくお願いします。ちなみに、BK1のサイトには、小田中さんの手書きポップの画像が掲載されています。

小田中直樹 (2010) 『ライブ・合理的選択論:投票行動のパラドクスから考える』勁草書房

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2009年3月 7日 (土)

オンデマンド本を買う

Pestoffほしい本があった。ペストフという北欧の学者が1998年に書いたBeyond the Market and Stateの訳書である。すでに絶版になっていて大学の図書館にはあるのだが、やはり手元に置いておきたい。版元の日本経済評論社にも在庫がなく、アマゾンのused(中古)では、定額給付金でも足りない1万3000円の高値が付いていた。それが元値の3990円で買えた。しかも新品!オンデマンド出版のなせるわざなのだ。

ON DEMAND「万能書店」 http://www.d-pub.co.jp/index.html
ペストフ、ビクター (2000=2007) 『福祉社会と市民民主主義 : 協同組合と社会的企業の役割』 藤田暁男[ほか]訳、日本経済評論社
Pestoff, Victor A. (1998) Beyond the Market & State: Social Enterprise & Civil Democracy in a Welfare Society, Ashgate Pub Ltd.

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2008年8月 2日 (土)

「みんなでネット鹿児島」再開へ

7月7日に「みんなでネット鹿児島」のウェブサイトが見られなくなったことを書いたところ、関係者の方からコメントをいただき「まもなく再開する予定」ということを教えられた。関係者には不愉快な思いをさせてしまったことを申し訳なく思うと同時に、「まもなく再開」の一言にホっとするやら、小躍りするやら、……なんともいえないハッピーな気持ちになった。

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2008年7月 7日 (月)

「みんなでネット鹿児島」にありがとう

Npo_kagoshima02「みんなでネット鹿児島」というサイトがこのほど閉鎖された。このサイトは、2004年5月に廃刊した「鹿児島新報」のOBたちが2005年に手弁当で開設したもので、新報OBと市民記者が身近なできごとをつづっていた。OBは「NPO鹿児島新報」というグループをつくり、新報でが培った取材・執筆などの技術を社会に還元する出前講座もおこなっていたと聞く。わたしが聞き取り調査をした2006年時点で、NPO法人の申請はなされていなかったが、定款に載せるべき文章はすでに練られていた。新聞社が破綻したあと、じぶんたちが地域にどのような貢献ができるかを真摯に考え続けていた。じぶんたちが地域に必要とされる理由--〈新聞〉の存在理由について模索していた。そのことは関係者インタビューで痛いほど感じた。……URL(http://www.npo-shinpo.com/)を入力しても何も表示されないディスプレーを見つめているうちに涙がこぼれそうになった。

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2008年7月 4日 (金)

新千年紀のラジカルヒーロー

2008autonocals400Y先生の研究室主宰のトークセッションに参加して、すてきなカレンダーを買った。トークセッションのタイトルは「グローバリゼーションと対抗メディアの現在 オートノメディアのジム・フレミング氏との対話」。Autonomedia という出版社も、Jim Fleming という方も存じ上げなかったが、とても面白かった。なんでも、フレミングさんは「G8対抗国際フォーラム」のために来日されており、7/6(日)から札幌で「オルタナティブサミット」で活動し、7/9(水)にはサミットが開催される洞爺湖に乗り込むようだ。ミーハーなわたしは、セッション終了後、フレミングさんが持参したカレンダー "2008 Autonomedia Calendar of Jubilee Saints: Radical Heros for the New Millennium" をドネーション込みの価格で譲っていただいた。世界中どこを探しても、こんなカレンダーはない。

Autonomedia http://www.autonomedia.org/

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