カテゴリー「dysphoria」の46件の記事

2012年5月29日 (火)

「大手病」に対する「無難病」

わたしにとって最初の就職活動は約30年前に遡る。当時は、今日ほど深刻な就職難ではなかったが、それでも就職活動なんてものは楽しいものではなく、よい経験になったとは思えない。わたしたちの世代も、「大手」「有名」企業を志向する傾向があり、「浅薄だ」「本当にやりたいことを考えろ」などと批判されたものである。最近では「大手病」というらしいが、「浅薄」なのは学生側だけだろうか。そうではなくて、むしろ採用側のほうが大学のブランドにこだわっていないのかか。もっといえば、そうした風潮は日本全体を覆っているのではないか。

続きを読む "「大手病」に対する「無難病」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月 1日 (水)

「寝てたら起こされるかな」

昨夕、気分を変えて喫茶店で本を読んでいると、隣にいた老夫婦とみられる男女が席を立った。男性のほうが、通りがかったウェイトレスを呼び止めて、小声で訊ねた。「この店の前で寝てたら、起こされるかな」。ウェイトレスはすこし困った表情で「ほかのお客様もいらっしゃいますし、店の前はちょっと」と言った。年の頃なら50代半ばから60歳くらいの男女は、テーブルの下に置いていたリュックやボストンバッグ、そして、コンビニのビニール袋を5つ6つを手に静かに店を出て、寄り添うように駅のほうに向かって歩いて行った。2人は住むところを失ったホームレスだったと思う。わたしは財布を握りしめたまま何もできなかったことを情けなく思った。

佐藤俊樹(2000)『不平等社会日本――さよなら総中流』、中公新書
井上達夫(2001)『現代の貧困』、岩波書店
神戸幸夫・大畑太郎(1999)『ホームレス自らを語る』、アストラ
岩田正美(2007)『現代の貧困――ワーキングプア/ホームレス/生活保護』、ちくま新書
佐野章二(2010)『ビッグイシューの挑戦』講談社

続きを読む "「寝てたら起こされるかな」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 2日 (水)

わが町は「禁」だらけ

Bannigふだん何気なく歩いている街角も、見方を変えると奇異に見えてくる。最近わたしが気になっているのは、街が「禁」の文字であふれかえっていることだ。「駐車禁止」「進入禁止」「立入禁止」「貼紙厳禁」「火気厳禁」・・・・ 街中で「禁」の文字と出会わない日はない。「禁」という文字は使っていなくても、「○○はご遠慮ください」とか、「○○お断りします」、「誰かが見てるぞ!」、「迷惑しています」、いろんな言い方で人の気持ちを萎えさせてくれるメッセージも少なくない。来日して漢字を覚え始めたばかりの外国人には、さぞかし変な国に映るのではないだろうか。

続きを読む "わが町は「禁」だらけ"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年4月27日 (火)

基地と NIMBY (ニンビー)

いまさらながら沖縄の普天間問題について、じぶんなりの考えを備忘録としてメモしておきたい。結論からいえば、わたしはこの問題を、(1) 日本の防衛問題、(1) 日米安保問題、(2) 米軍再編問題、そして何よりも(4) 沖縄だけが過大な負担を強いられている不平等問題――などと理解していた。だが、この間の世論の動きをみるにつけ、もっとも深刻なのは ニンビー問題ではないかと考えるようになった。

NIMBY @ Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/NIMBY

続きを読む "基地と NIMBY (ニンビー)"

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2010年4月23日 (金)

就職活動とサイレント

週刊東洋経済の山縣裕一郎さんがラジオ番組で紹介されていた「サイレント」という現象に胸が痛くなった。2010年4月22日のTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」にニュースズームアップ+αというコーナーで山縣さんが問題にしていた「サイレント」とは、就活の学生にYesともNoとも伝えず、放置する企業の不誠実な行為を指す学生たちの隠語である。学生を「サイレント」状態に置く企業は少なからずあり、有名企業に多いということだ。

山縣裕一郎「就職活動で問題化するサイレントとは」 TBSラジオ森本毅郎スタンバイ 2010/04/22
Podcast MP3 Audio File - http://podcast.tbsradio.jp/stand-by/files/plus20100422.mp3

続きを読む "就職活動とサイレント"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年2月12日 (金)

引用と剽窃と立松さん(他山の石)

Tatematsu_5故立松和平さんの死亡記事や追悼記事をみていると、いまだに「引用」と「剽窃」の区別ができていない記述にお目にかかり当惑した。記事のなかで、「無断引用」という表現がプロ表現者によって使われているのは嘆かわしい。「引用」は本来無断で行う行為であり、「剽窃」とは別なる概念である。この2つの言葉がいまだに混同されるのは何故だろう。

すこし横道にそれるが、立松さんが盗作後に書き直した作品を高橋伴明さんが撮った『光の雨』は、劇中劇のスタイルを採っていて、ストレートな若松作品と見比べると面白い。

高橋伴明監督 『光の雨 連合赤軍事件』 (2001)

続きを読む "引用と剽窃と立松さん(他山の石)"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年4月27日 (月)

バッシング現象の不思議

HatoyamaSMAPの草なぎ剛氏が公然わいせつ容疑で逮捕されたが、いわゆる「バッシング」が起こったように見えない。むしろ、彼を「最低の人間」と悪罵した鳩山総務大臣への反発に大臣が謝罪したくらいだ。民主党代表秘書が逮捕されたときも、苛烈なバッシングは起こったように映らない。バッシングせよと言っているのではない。むしろ逆で、わたしはヒステリー状態を心の底から嫌悪している。

総務相「最低の人間」発言を撤回 草なぎ容疑者逮捕で (47news 2009/04/24 11:27)

続きを読む "バッシング現象の不思議"

| | コメント (6) | トラックバック (1)

2009年4月12日 (日)

さん付けのすすめ

新聞記者になって痛感したのは徒弟制度の苛烈さだった。「おい新米、タバコ買ってこい」など仕事と無関係の雑用もたびたび命じられ、ミスするたびに「あほ」「ぼけ」「目ぇ噛んで死ね」などと悪罵を浴びせられたものである。崩壊の一歩手前まで尊厳を踏みにじられた状態で、少しずつ仕事を覚えていくのが通例であった。もう20年も前の、しかも特定の新聞社の、特定の先輩や上司の振るまいなので、むろん一般化することはできないし、さすがに現在では、このような荒んだ人材育成は行われていないだろう。そんなことを思ったのは、わたしがかつて新聞社にいたころの「先輩」と遭遇し、いきなり「さん」付けで呼ばれたことだ。かつてなら横柄に「おい顔貸せ」などとヌカしていたであろうその人のバツの悪そうな表情は、まことに気の毒であった。

続きを読む "さん付けのすすめ"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月13日 (金)

職質とYouTube

Koban職務質問のもようを動画共有サイトに投稿する例が目立つ。もし悪質な職質がおこなわれたなら、人に伝えるというのは自然なことだ。警察官に撮影や投稿を規制する正当な理由はない。当局はYouTubeに削除要請するというイタチごっこをするより、むしろ撮られても恥じない職務態度を身につけさせ、信頼回復を優先させるべきだろう。信頼されるためには、まず人を信頼することからはじめるべきだ。職質時の態度が気に入らないという理由で、暴言をぶつけ、にらみつけ、ヤクザ顔負けの圧迫をする。それは弱い人間のすることだ。

職務質問をネットで動画投稿 県警、規制策なく困惑 【神戸新聞】 (2009/3/10 14:29)

続きを読む "職質とYouTube"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年1月29日 (木)

『タブロイド』とビジランティズム

Cronicas法治国家はリンチ(私刑)を許さない。だが、現実はそうした暴力ほど人を高揚させ、慰撫するものはないのかもしれない。それは戦場という特異な場だけで起こっていることではなくて、平和なコミュニティでもふつうに起きていることを映画『タブロイド』は突きつける。日本とエクアドルとではマスメディアやジャーナリストのあり方がいくぶん異なっているが、そういうことを抜きにして、この恐怖は普遍的だと思う。

セバスチャン・コルデロ監督 『タブロイド』 (原題:Crónicas 英題:Tabloid 、メキシコ・エクアドル、2006)

続きを読む "『タブロイド』とビジランティズム"

| | コメント (5) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧