カテゴリー「economics」の16件の記事

2011年2月21日 (月)

「市民社会」がかつて含意したもの(備忘録)

わたしたちが少しのためらいもなく使う「市民社会」という言葉は、かつての日本では軽々に使われることはなかった。理由はマルクス主義の影響である。戦後の思想界をリードした丸山眞男や大塚久雄が活躍した時代、「市民社会」という言葉は civil societyではなく、 bürgerliche Gesellschaft (ブルジョアのゲゼルシャフト)の翻訳として受け止められるのが一般的で、この言葉を肯定的に使用することは資本主義を容認し、教条的なマルクス主義者からの批判を招くものであった。こうした日本の「市民社会」をめぐる議論について整理してくれている論文と出会った。

渡辺雅男(2009)「日本における市民社会論の系譜」『一橋社会科学』通号6,pp.49-72.

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2010年3月23日 (火)

著者直筆のポップを探せ

03250941同居人が転職後はじめて関わった単行本が書店に並んでいます。東北大学大学院の小田中直樹著『ライブ・合理的選択論』(勁草書房、2010)。書店によっては、書棚には著者・小田中さん直筆のポップをおいているところがあるようです。お近くの書店で見かけたら、報告をよろしくお願いします。ちなみに、BK1のサイトには、小田中さんの手書きポップの画像が掲載されています。

小田中直樹 (2010) 『ライブ・合理的選択論:投票行動のパラドクスから考える』勁草書房

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2010年3月 8日 (月)

公民的徳性と一般的互酬性(備忘録)

Kodokunabowling社会学や政治学の世界では明確に区別されているものの、日常生活で混同がちな概念に「公民的徳性 (Civic Virtue) 」と「一般的互酬性 (General Reciprocity) 」とがある。前者は「市民の美徳」などと呼ばれ、近代市民に埋め込まれるべき規範的な精神性のようなもの。後者は「一般化された互酬実践」などの表現をする人もいるが、ようするに「情けは人のためならず」という古くからの日本の諺のようなことを意味する。ただ、この二者は似て非なるものだ。

Putnam, Robert D. (2000=2006) Bowling Alone: the Collapse and Revival of the American Community, Simon & Schuster, New York, (柴内康文訳, 『孤独なボウリング ― 米国コミュニティの崩壊と再生』, 柏書房 )

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2009年10月15日 (木)

恐怖する「勝ち組」

素朴な疑問をひとつ。失業やホームレスの問題は「雇ってもらえない人」の問題ではない。派遣切りをしたり、雇い止めをしたり、内定取り消しをする「冷酷企業」だけの問題でもないような気がする(責められる会社もあるだろう)。むしろ、社会全体の問題じゃないか。すこし無理めの例えだが、わたしたちは仕事と金という資源の「椅子取りゲーム」をしているようなもので、ひとりで椅子を5つも6つも独占させないような仕組みを導入する必要がある。一度や二度、椅子に座れなくても、「明日があるさ」といえる世の中が好ましい。仕事や金は、椅子とは違って分割できるが、なぜ分割しないかというと、ひとたび「負け組」に陥ってしまうと「明日がない」からで、「勝ち組」はイケているようで、じつは転落してしまうことに過剰に恐怖を感じているのではないだろうか。

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2009年4月 3日 (金)

統制と自由/不平等と平等(備忘録)

大澤真幸さんが4月1日付『東京新聞』夕刊の論壇時評で、柄谷行人さんの論究する交換様式を紹介していた。大澤さんは「柄谷行人は、社会の支配的な『交換様式』に着目することで、切実で根本的な問いに答えを与えようと努力してきた」と述べ、柄谷さんの考えを図に示した。この図を見て、ハっとした。似たものをどこかで見たことがある! そう、ボッビオによる右翼/左翼の図とほぼ同じなのだ。ただ、悲しいかな、わたしはボッビオをきちんと読んだことがないし、それどころか彼がヨーロッパ政治の見取り図として示したスペクトラムの図も見ていない。うーん、くやしい。

大澤真幸「第四の交換様式/『抑圧された相乗性』の回帰」東京新聞、論壇時評、2009年4月1日夕刊7面
見田宗介 (1971) 『人間解放の理論のために』 筑摩書房

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2009年3月17日 (火)

ペストフの三角形(備忘録)

Pestoff_triangle_smallBeyond_the_marke_and_state4月から6回目の夏学期。春休みのうちに、財政や福祉についていくつかの文献に触れ、すこしは勉強したつもりだが、やはり独りで本を読む(斜め読み&拾い読み)だけでは理解も浅い。ただ、日本の専門家が紹介する「ペストフの三角形」のなかには、でたらめに描かれている例も見受けられたので、じぶんの備忘録として、ペストフの英訳論文を参照しながら勝手に修正した。(下記の本に登場する三角形図はちょい不正確です)

ペストフ、ビクター (2000=2007) 『福祉社会と市民民主主義 : 協同組合と社会的企業の役割』 藤田暁男[ほか]訳、日本経済評論社

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2009年3月11日 (水)

アマゾンの1円本

1yenいまさらながらの疑問。amazon.com の used (中古)をみると、たまに1円で販売されている本を見かける。100冊売っても100円にしかならない。単純に値段で比べれば、わたしの新書1冊と吉津さんの中古本798冊余りが釣り合う勘定。なんでやねん?・・・この仕組み、いつかだれかが教えてくれるだろうと自らは調べずにいたのだけど、先日、つい勢いで1円本を買った。価格1円。送料340円。なぜだ?

吉津耕一 (1992) 『「草の根資本主義」って何??手づくりリゾートへの招待状』 農山漁村文化協会

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2009年1月 8日 (木)

地域デモクラシーと共同経済

Jinno地域経済の活性化を考えるとき、大企業の生産拠点を誘致したり、地元産品を大都会で売ったりすることがすぐに頭に浮かぶ。これは市場を通じて大きな都市や企業から富を引っ張ってくる筋道だけど、ビジネスしか目に入らなくなるのは考えもの。財政--みんなで持ち寄ったお金(税)をどうのように使うか、NPOたちの営為をどう位置づけるか。そのことを神野直彦先生の本に教えられた。

神野直彦 (2002) 『地域再生の経済学―豊かさを問い直す』 中公新書

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2008年12月 8日 (月)

『ファイト・クラブ』から10年

Fightclub3ブラッド・ピットが出演する映画の多くは、彼を愛でるファン向けに作られていると思っていたが、映画『ファイト・クラブ』はカルト作家チャック・パラニュークの原作がよかったのだと思う。いま観ると、約10年ほど前のアメリカ下流に覆っていた鬱屈が想像できる。「これでみんな平等になる」などというセリフが出て、ウォールストリートとおぼしき金融街の巨大高層ビルが爆破され崩壊する場面がある。これって、9・11事件やサブプライムローンをめぐる金融メルトダウンと妙にシンクロする。

デヴィッド・フィンチャー監督 『ファイト・クラブ』 (原題: Fight Club、1999、米)

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2008年6月20日 (金)

ふりだしのロールズ (備忘録)

Contemporarypoliticalphilosophy A_theory_of_justice秋葉原の通り魔事件が、格差に関する議論に弾みをつけている。容疑者が携帯サイトの日記に「勝ち組はみんな死んでしまえ」などの文章を残していたことがマスメディアで広く伝えられたためだ。ただし、日記を見てみると、経済格差やその原因のひとつである学歴差別の問題よりも、むしろ容姿や恋愛をめぐる“負け組”意識(内的な格差感覚?)のほうが深刻に思える。そして、そうした格差感覚に対し、ロールズの正義原理はうまく適用できない。ただし、せっかくなのでこの際、ロールズが最初に提示した原理を備忘録としてメモしておきたい。ロールズはすごろくでいうと「ふりだしに戻る」的な存在だ。

ロールズ,J (1979) 『正義論』 矢島鈞次(訳)、原題 ”A Theory of Justice”、紀伊国屋書店
キムリッカ, W (2005) 「第3章 リベラルな平等」 、『新版 現代政治理論』 岡崎晴輝ほか(訳)、原題 ” Contemporary Political Philosophy”、日本経済評論社

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